さようなら、きんいろ。
「この方向って確か浜辺の方よね?
夜の海も綺麗なんでしょう? いいなぁ」
落ちこむあたしは都の視界に入っていない。
嬉しそうに頬を緩めながら、羨ましいと続けた彼女に「当然たい」と心の中で返す。
海は荒れることもあるけど、朝も、昼も、夜も、美しい。
光がある時もない時も、波と音があるだけで十分なんだ。
だけどその美しい海の中、濡れて笑うきょうちゃんは、海よりもずっと素敵だった。
きょうちゃんが綺麗で、だから海もいつもよりずっと眩しかった。
ずんずんと進めていた足をゆっくりしたものに変え、ふわりふわりとアスファルトに乗せる。
それはいつしか一歩一歩が重たいような動きになり、歩くのをやめた。
「真波ちゃん?」
「都はきょうちゃんの金茶ん髪、知っとぉと?」
日に焼けて色素が薄くなった髪は茶色をとおりこして金色に見える部分が多くあった。
傷んでいるかと思いきや、さらさらと掌をすべる髪は指先に絡むことなんてない。