さようなら、きんいろ。

4





星が溶けたような海が揺れる。

波音を立てて、海と空の境目は曖昧だ。



きょうちゃんの家でごはんを食べたあとの真夜中。

途切れ途切れの思考を繰り返しているうちに、こんなに時間が過ぎていた。



昔のきょうちゃん、今のきょうちゃん、さっきの都の言葉。

頭をぐるぐると駆け巡り、砂がつくことを気にもとめず、あたしは砂浜に座りこんでいた。



都に対して思っていた気持ちを投げつけたけど、気は紛れない。

むしろもやもやと心が陰り、家に帰る気になんてなれそうもない。



はぁ、と砂が落ちるようにかすかなため息をこぼすと、



「真波、そろそろ帰んないとおばさん心配するぞ」



後ろから聞き慣れた声────きょうちゃんの声がする。



振り向くとそこにはやっぱり、予想どおり彼の姿。

迎えに来てくれたことが嬉しいと思いつつも、座りながら「都になんか言ったって?」と言われてしまう。

自然と眉間にしわが寄った。



「あいつ、きょうちゃんになんか言ったとやろ?」



堪えとらんごと見えたとに泣きついたってね?

あー好かん、情けんなか。

こがんふうにきょうちゃんからうちに伝わるごとするとか、やり方のずるかとね。



膨れあがった怒りがあたしの心の揺らぎをかき消す。



そがん方法じゃ、うちは負けたりせんけんね!






< 19 / 31 >

この作品をシェア

pagetop