さようなら、きんいろ。
あたしが息をつめるほどの空気。
それを同じように感じているはずのきょうちゃんは重たい、重たいため息をこぼした。
「真波も、あと二年半で大学生か。
あっという間にそのセーラー服を脱ぎ捨てて、この島を出て行くんだな」
「話ばそらさんで」
「いいから聞けって」
きょうちゃんがあたしの質問に答える様子もなく、ぽつぽつと言葉を落とす。
まずは話を聞かないと答えてくれそうにない。
きょうちゃんのばか。
天然たらし。
うちがきょうちゃんには弱かとは知っとっとやろに、ずるかよ。
仕方がなくあたしは彼の視線を感じながら、顔を下げて唇に歯を立てた。
それなのに「唇は噛むなよ」なんて。
あたしのことをわかってくれてるのは嬉しいけど、今は嬉しくない。
黙って彼の言葉を無視していると、ため息を吐いて彼が話を続ける。
「島を出たら、失うものがたくさんあるよ。
お前が気にしてた髪色とか、言葉遣いとか、生活のリズムとか」
「うん」
「周りに合わせることがまったくないとは言えないし、苦しいこともある」
どがんと、好かん。
変わりとぉなか、変えとぉなか。
だって、そいできょうちゃんが手に入るわけじゃなかやろ?
そんなら、ここでこのまま、羊水のごと優しゅう包みこんでくるっ海に浮かんどきたか。