さようなら、きんいろ。




「……今の真波の世界はとても狭いから。
そのままじゃいけないよな」

「ひっ、く、」

「もっとたくさんのものを見て、感じて、受け止めるんだ。
そうしたらきっと、俺以外のいい人が、他にも大切なものがたくさん見つかる」



大人びた言葉だ。



当然たいね、まだ子どものうちからしたらきょうちゃんはずっと大人やもんね。

中学生気分の抜けきらなんうちと、大学生とは、違うとやね。



その差が悔しい。

あたしの無知な部分を指摘しているみたいで、切なくて。



「遠ざかったらその先で、価値あるものが島にあったとわかるから」



ゆるゆると、ようやく顔をあげた。

ぐしゃぐしゃに崩れた泣き顔を見て、きょうちゃんはあたしの涙をすくってくれる。

その間も片手はあたしの頭に触れたまま、そっと髪をなぞるように撫でているから、思わず小さく問いかけた。



「きょうちゃんにとっても、ちゃんとここに価値あるものはあったと?」



間髪入れず、もちろんと返されて、少し驚く。

まばたきの拍子にまたこぼれた涙はきょうちゃんの指先をつうと伝った。



「真波がいたよ」






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