さようなら、きんいろ。
息を呑みこむ。想いが、ひたひたと胸にしみていく。
「俺は真波のものにはならないよ」
「……」
「でも、大切な思い出には真波がいる。
同じ故郷がある。いつだって島が、繋いでくれるんだ」
そうたい。
そうじゃなからんば。
まぶたを閉じればいつも眩しい太陽に、その輝きを受ける海。
子守唄のように、心にとけるように、響いている波の音。
しおからい風が頬をかすめていく感覚。
海が近い、この島で育ったことは、変わらない。
なくなったりしないんだ。
「きょうちゃんは、うちのこと、好いとぉと?」
突然のあたしの問い。
だけどきょうちゃんは焦ることなく、わずかに瞳を伏せたあと、しっかりとあたしと視線を交えた。
「……好きだよ」
「うん」
ばってんそいは、うちがずっと欲しかったものっちゃなかと。
そいならよかよ。
そいで、よかさ。
「うちもね、好き。……大好きやったとよ」
涙に濡れて荒れるばかりだった心は、静かに、凪いでいった。