さようなら、きんいろ。
「真波ちゃん、よね?
恭介に話をきいてからずっと、わたし、あなたに会いたいと思っていたの」
両手をあわせてふふっと小さく笑う。
意味なく首をかすかに傾げたあとで、ほっそりとした手があたしに向かって差し出される。
「はじめまして。仲よくしてね」
握手を求めるそれを、しばし見つめる。
そしてあたしは、小気味いいほどの音を立ててそれを振り払った。
かすかに触れた指先をもう片方の手でぎゅっと包みこむ。
よろしくなんて、誰(だい)がすっか。
「うち、あんたがきょうちゃんの彼女とか認めんとやけん!」
来てしもうたもんは仕方(しょん)なか。
そうたい、仕方(しょん)なかったい。
「東京に帰り、ばか!」
もう二度と来んごと、きょうちゃんのそばに立つことんなかごと、追い払っちまえばよかったい。
きっ、と彼女を睨みつけるあたしのことを、きょうちゃんは困ったように見つめていた。
だけどそんなこと気にしていられない。
きょうちゃんばこの女が騙しとっとに決まっとろうが。
そがんでなからんば、きょうちゃんはこがんふうに変わったりしとらんはず。
うん、ぜったいそがんさ!
待っとってね、きょうちゃん。
うちがこんな女、すぐに追い出してやっけんね!