この想いを唄にのせて






「ねえ、ミッチャン」
「何です?」
「私は難攻不落な問題に直面して永久のラビリンスに迷い込んでしまいそうだよ」
「何ですか、最近明らかに様子が変ですけど、気持ち悪いですよサクタ部長」


 ぶりっ子口調をどこかに置いてきてしまったらしいミッチャンは机に項垂れる私を見下ろして実に不愉快そうに顔をしかめた。
 放課後の部室、今日はミッチャン以外の男三人が急用(タヌキチは進路の相談、スズキくんは一人で作曲、パンダは自分探しの旅に出てしまったらしい)で部活には女子二人組しか揃っていない。
 私はこの機会にスズキくんに頼まれたラブソングの作詞をしようと思っていたのだけど、筆が進まずまだ一文も書けていなかった。
 本当はこの三日間ずっと考えていた。「俺を思って書いてください」と言ったスズキくんの言葉の意味を。結局、何も分かってはいないのだけど。


「ねえ、恋って何だろう……」
「うわーそれ1番面倒くさい質問ですね」
「じゃあ、ミッチャンは好きな人いないの?」
「そ、れは……」


 すると途端にミッチャンは顔を真っ赤にして深くうつむいた。


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