この想いを唄にのせて
「スズキなら教室にいると思うよ。行ってみれば?」
タヌキチは相変わらず全てを見透かしたように、私にそう言った。
「行ってくる」
「うん。サクタなら、きっと大丈夫だよ」
不思議だけどタヌキチにそう言われたら、いけそうな気がしてきた。自然と大丈夫だって思える。
私はまたいつかのように、スズキくんのいる教室に向かった。
入口にさしかかったところでギターの音が聞こえてきて、私は足音を響かせないようにそっと中を覗いた。
夕陽がさすスズキくんの横顔はとても綺麗だと思った。長い睫毛がキラキラして、色素の薄い髪が風が吹く度にふわふわと揺れた。
「……部長?」
音は立てていないはずなのに、気づかれてしまった。
「そんなところにいないで、入ってきたらどうです?」
スズキくんに言われるまま、私はゆっくりと教室に足を踏み入れた。緊張のせいなのか心臓がドキドキと音を立て始める。
スズキくんの目の前に立って、ゆっくりと顔を上げた。まだ怖いけれど、私の目を真っ直ぐに見つめるスズキくんとちゃんと向き合った。