この想いを唄にのせて
―――― 約2年前。
その日は、兄貴の通う高校での学園祭があった。重度なブラコンの兄貴に「二日目は一般客も入れるからおいで~」とは言われたけど、正直興味がなかった俺は行く気なんてさらさらなかった。
けれど中三の俺は軽音部に所属する兄貴のギターをたまに貸して貰っていたので、渋々ではあったがギターを弾けなくなることを思うと、学園祭の方に自然と足が向いていた。
兄貴に言われたから仕方ないよな、という軽い気持ちで兄貴が出演すると言っていた軽音部のライブが行われる講堂に向かった。
そこでは既にライブが行われていた。その盛り上がりようは俺の想像をはるかに越えていて圧倒された。
部員数は全員で4人。兄貴が部長を務めているらしい。
兄貴がギターを弾いていて、隣に立つベースを弾いている男子がボーカルのようだった。
見た目だけで言えば爽やかイケメンなそいつは、声量もロングトーンも伸びやかでとても綺麗な歌声をしていた。その甘いマスクも相まって、女子からの声援を独り占めにしている。
どうせ兄貴が部長をしてる軽音部なんて大したことないだろ、なんて思っていた自分が恥ずかしくなった。でもそれくらい、カッコよかった。
ステージの上に立つみんなが楽しそうにキラキラしていて、俺も一緒にその場所に立ちたいと思った。