この想いを唄にのせて
ライブがとうとうラストを迎えるという場面で、兄貴が皆より一歩前に出て喋り始めた。
「えー、皆さん。この度は俺たちオレンジエードの学園祭ライブに来ていただきありがとうございます!
歴代の先輩達から引き継いできたこのオレンジエードというバンド名でリーダーもとい、部長を務めるのも最後になりました。俺にとって最後に立つ舞台です。
これからは後輩に引き継いで、もっともっと長くオレンジエードを続けていってもらえたらと思います。
次の部長はキーボードを担当している二年生のタツキくんなので、皆さんこれからも温かい目で応援してやって下さい!」
客席の皆が拍手をした。俺も空気に飲まれて拍手をしたけれど、たぶんもう見に来ることはない。兄貴が卒業すればどうせ俺には関係ないのだから。
「それではラストの曲です!夏休みのあたりから俺が自分で作曲しました!作詞は、ドラム担当のサクタちゃんに書いて貰ったものなので、これからもオレンジエードの皆に歌い継いでもらうことが目標です。それでは聞いてください【Dream not to be over】」
俺も知らない間に兄貴が作ったという最後の曲は、さっきまで聞いていたものとは全然違っていた。
徐々にバラバラだった楽器たちの音が重なり、耳だけじゃなく心臓から骨にまで響き渡ってワクワクした。全身が沸き立つような感覚が染み込んで、ドキドキした。
曲調のおかげか、歌詞の言葉一つ一つがスッと心に馴染んでいくようで思わず涙がこぼれた。