この想いを唄にのせて
曲の途中、ドラムのソロパートがあった。それを見た瞬間、体中がぞわぞわと襲われて、鳥肌が立った。
圧倒的なまでに力強いその演奏しているのが女子だということが俺にとって何よりの驚きだった。
曲紹介の時に兄貴が言っていた、この曲の歌詞を書いたのはドラム担当者の人だと。
「サクタ……先輩」
それが、俺とサクタ先輩の出会いだった。いや、俺が一方的に知っただけで出会いではない。
けれどその瞬間に俺はもう決意していた。サクタ先輩のいるこの学園に入ることを。
それからの俺はとにかく必死だった。苦手な兄貴から勉強を教えて貰って何とかサクタ先輩のいる学園に合格し、そして、その春に俺は先輩と再会した。先輩にとっては俺との初めての出会いだった。
俺は、サクタ先輩が部長を務める軽音部に入部したのだった。