この想いを唄にのせて



 ――――― 現在。


「あ、ちょっと、タヌキチ!どこ見てんのよバカ!」
「どこも見てないからはやく入れろよ。でないともう俺……限界」
「そんなこと言ったって、私初めてだからうまくできな……あっ」
「ったくヘタクソだな、もう俺が入れてやるから下いけよ」
「いや!そんなの恥ずかしいじゃん!」
「……先輩達、何してるんですか」
「あ!スズキくん!」


 部室に入った瞬間、目の前ではタヌキチ先輩とサクタ部長が何やら部室の電球を入れ替える作業をしていた。タヌキチ先輩が四つん這いになって、その上にサクタ部長が乗っている状態だ。
 会話だけ聞いていたら、いかがわしいことをしているようにしか聞こえない。


「部長、俺がやるから貸してください」
「え、本当?」
「ま、待て、男の体重を支え切れる自信ないぞ俺!」
「大丈夫です、俺わりと軽いですから」
「そういう問題じゃ……ぎゃっ!」


 躊躇なく踏んでやった。
 部長と同級生なのは仕方ないにしても、この二人は仲が良すぎてムカつくので定期的にタヌキチ先輩をいじるのは俺のストレス発散だったりする。


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