この想いを唄にのせて



「それじゃ、タヌキチ!後のこと任せるね」
「うん、わかった」
「帰ろ、スズキくん」
「はい!タヌキチ先輩、お先に失礼します」
「はいよーお疲れ」


 タヌキチ先輩に見送られて、部室の扉を閉めると部長と一緒に静かな廊下を歩いた。


「部長が誘ってくれるのって珍しいですよね」
「そうかな?……あ!それより、スズキくんに報告あるんだよ!」
「何です?」
「この前頼まれた歌詞、やっと書けたの。スズキくんの作った曲聞いてたら湧き上がってきて一気に書いちゃった!」
「本当ですか!見たいです!」


 俺がそう言うと先輩は鞄の中から青いクリアファイルを取り出して俺の方に渡してきた。


「これ、家に帰ったら読んで」
「今読んじゃダメなんですか?」
「今はちょっと……恥ずかしいから」
「何がです?」
「何がって……スズキくんが俺を思って書いて下さいって言ったんじゃん。だから、その、スズキくんへの想いを……」


 だんだんと顔を赤く染めていく部長が、これ以上なく可愛すぎた。何なんですか部長。天使ですか。
 内から悶える俺の気持ちなんて知らない部長は「と、とにかく!絶対家で読んでね!」と、何度も釘を刺してきた。相当恥ずかしいのだろう。読むのが楽しみだ。


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