この想いを唄にのせて
「ずっと気になってたんだけど、何で私だったの?」
「え?」
「歌詞のこと。スズキくん、自分でも書けるのに何で私だったのかなって」
「それは……ただサクタ部長の書いた歌詞を歌いたかっただけですよ」
カッコつけてそんなことを言ってみたけど、本当は内心嫉妬してたんだと思う。
2年前のあの日、初めて部長の書いたあの歌詞を歌っていたのはタヌキチ先輩だった。それがすごく悔しくて、俺もどうしても歌いたかった。
サクタ部長が俺のためだけに書いた歌詞を、自分の歌声でみんなに、タヌキチ先輩に聞かせてやりたかった。
そんなことを言ったら、ますますガキっぽく思われて呆れられてしまうかもしれない。だけど、負けたくない。サクタ先輩を好きな気持ちだけは誰にも負けたくないから。