この想いを唄にのせて
「残るはスズキか…」
ポツンと呟くように言ったタヌキチの言葉にミッチャンが「あいつが時間内に来るわけないじゃん」と、当たり前のように言った。いつものぶりっ子な喋り方を忘れてしまうくらいにはミッチャンも呆れているのだろう。
「サクタ部長~どうします?私達だけで練習しましょうか?」
「いやいや、メインボーカルとベースギターなしじゃキツイだろ」
「ボーカルはタヌキチ先輩いるから何とかなるじゃないですか~」
「でも本番で歌うのはスズキだし」
「だってあいつ遅刻常習犯じゃん」
ミッチャン、敬語はどこに置いてきたの。ツッコもうかと思ったけど今はそれどころではない。ミッチャンがピリピリしてきているし、パンダもこのままじゃどこかに放浪してしまいそうだ。
それに練習を進めないといけない理由はもう一つある。それは二週間後にある学園祭だ。
私達軽音部は講堂を貸し切ってのライブをさせてもらえることになっている。そこでのセットリストを決めたり、新曲なども披露する予定なので悠長にしている場合ではないのだ。
それは随分と前からスズキくんにも説明していたはずなのに、このままでは全部めちゃくちゃだ。