この想いを唄にのせて
「作詞を、部長に頼みたいんです」
「え、本気?」
「本気です」
「でも、作詞ならスズキくんでもできるじゃん」
「サクタ部長に書いてほしいんです。俺の作った曲と、サクタ部長の書いた歌詞で、歌いたいんです」
スズキくんは珍しく真剣な表情で私を見た。その真っ直ぐな瞳に、なぜだか心臓がうるさくなって思わず見入ってしまう。
「わ、分かったよ……どんな歌詞がいいの?」
「ラブソングで」
「ら、ラブソング!?」
「ついでにもう一つわがままを言うと、俺を思いながら書いて欲しいです」
「は!?何で私がスズキくんを思って書かなきゃなんないの!?」
「歌詞は女の人目線がいいんです。だから俺を思って書いてください」
「いやいや、理由になってない!」
「愛がこもってなかったら即ボツにしますから」
「無茶ばっかり言わないでよ!」
そもそもスズキくんに対して後輩としての愛情はあっても恋愛の愛情はないのだからラブソングなんて書きようがない。そうでなくても別に誰かを好きなわけでもないのに。