勘違いという恋の駆け引き


引っ張られる腕が痛い
握り締められた手首が痛い
テンポが合わない足の動きに
何度も転びそうになるが
全く止まる気配がない

無言のまま、ただ歩き続けた
一体何があったのか
全くわからないまま、トウ兄の部屋を出た



トウ兄…大丈夫かな?
握られた手を見れば
暗いけど、赤くなっているのがわかる


大きな通りに出て、タクシーを拾い
たどり着いたのは優さんの部屋
タクシーの中でも無言
私の手首は握られたまま
やっと離されたのは
部屋に着いてからだった


これ、と渡されたのは保冷剤
握られていた手首は赤くなっていた
ソファに座り手首を冷やしていたら
顔を洗ったのか
前髪と、ワイシャツが少し濡れた優さんが戻ってきた


「ごめん」


ねぇ、優さん
何があったの?
トウ兄と何があったか聞いてもいい?


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