勘違いという恋の駆け引き
『二人とも大丈夫?』
「…まぁ、なんとか。二日酔いじゃないけど、寝不足なだけ」
「…同じく、」
運転中の優と
後部座席でグッタリしている絢斗に
ブラックの缶コーヒーを渡した
「…まあ、よかったんじゃねーの?」
『うん、ありがとうね絢斗』
「本当だ、相変わらず親父さん酒強えし、日帰りできるかもって一瞬でも思っちまった事を後悔するわ」
ごめんって、
絢斗がいてくれて、助かったのは事実だ
何かお礼と思ったけど、全く思いつかず
お昼でも奢ろうか?と言えば
女に奢ってもらうなんて糞だ、と言い出す
「なら、俺が奢ってやるよ。ついでに不動産屋にもついて来いよ、あそこの社長、友達だろ?」
許しが出たから直ぐにでも
一緒に暮らしたいという優
絢斗は面倒くさそうにしていたけど
仕方ないな、と笑ってくれた
「今日、契約するから」
『今日!?』
驚いたけど、
私も早く優と一緒に暮らしたい
赤信号で止まった車
チラッと後部座席を見れば
絢斗は目を瞑って眠っている
だから、静かに
私たちは唇を重ねた
【完】