勘違いという恋の駆け引き
「藍ちゃんからのお誘いなんて嬉しいな」
ニコニコしながら
私の目の前に座る優さん
バイトが休みな今日
この日しかないと決めつけ
優さんに連絡を取った
自分から連絡をしたのは初めてだ
前に貰った名刺に書かれていた
携帯番号にかけたわけで、
「はい、長谷部」
その声は
いつもと違い、男らしい声
一瞬番号を間違えたかと思ったが
長谷部、と名乗った以上、相手は優さんだ
『お忙しいのに、すみません』
仕事中に電話をしてしまったのを
後から気が付き後悔した
仕事終わりに会おうと約束をし
私達はカフェで待ち合わせをした
バイトが無い分、時間に余裕があった私
早めにカフェに入り
先週発売したばかりの直木賞作家の新作を読み始めた
そのおかげで時間はあっという間に過ぎ
優さんにお断りをするという緊張も和らいでいった