勘違いという恋の駆け引き



あーん、と
レンゲを口に持ってくる優さん
口を結んで食べようとしない私を見て
熱いかな?と自分の口元に移動し
ふぅー、ふぅー、と冷ましている


「藍、食べないとダメだ」


そうして、また私の口元に持ってきた
これって、私が食べ終わるまで続くんだろうか?
身体は怠い、頭も痛いのに
優さんで更に疲れる
ならとっとと帰ってもらうのが一番だ

そう思い、口を開けた




……薬のせいか、睡魔が襲う
帰ってと言いたいが
食器の洗う音が懐かしくて
実家にいた頃を思い出した


自分の部屋があるのに
私が寝込むと必ずリビングの隣の畳部屋に寝かされていた
母が家事をする音が聞こえ
母は私の顔を常に見に来た


「寝込んだ時は心細くなるのよ。藍は強がりだから、余計心配だわ」


だから、寝込んでも
寂しい気持ちや辛さは無かった
今も…部屋に誰かがいる
優さんがいることが
何よりも心強い


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