勘違いという恋の駆け引き
看病してくれたあの日から
私達は付き合うことになった
だからと言って
恋人らしいことは
何一つしていない
もちろん電話もメールも…
『…あ、絢斗は?』
何か会話をと思いながら出た言葉
けどそれが
更に沈黙を悪化させた
無言のまま優さんの背中を追いかける
一体なにに不機嫌なのかわからない
絢斗の事を聞いたのが
そんなにいけなかった?
途中、話しかけようと
何度も思ったが
話しかけづらい雰囲気にのまれ
結局なにも言えなかった
だから、
『私、こっち方面だから』と
別れるタイミングを失ってしまった
いつも降りない駅
いつも足を踏み入れない街
優さんを見失うと
迷子になってしまいそうだ
ここになぜ?と疑問に思ったが
それはすぐに理解できた
優さんは1件のアパートに足を踏み入れた
ここは…優さんの住まいだろう