勘違いという恋の駆け引き


「少しだけど、いいかな?」



そう言ってはにかんだ笑顔が
付き合いたての頃が蘇る



『お待たせしました、』


テーブルにアイスコーヒーを置き
戻ろうとしたとき
手首を掴まれて振り返る


「今日は何時あがり?話したいんだ。飯でも行こうよ。藍が好きなお好み焼きでも食べに行こう」


今更…なんの話、でしょうか?
健太さんと二人になったら
いいことなんて一つも無い


『ごめんなさい、帰りは彼が迎えに来ることになってるの…』


それだけ言って
健太さんの言葉を聞かずに立ち去った
今日、優さんと約束はしていない
忙しいのもあり
メールはするが会ってはいなかった


優さんにメールをした方がいいか
悩んだ挙句
やはり心配かけたく無い


大丈夫だと心に言い聞かせ
健太さんが帰るまで
極力、近づかないように
古書の清掃をしていた

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