勘違いという恋の駆け引き
『…健太さん、ごめんなさい。私、急ぐからーー』
そう言って走り出そうとした
が、またも健太さんに捕まってしまう
離して、と握られた手首
「藍、話がしたいんだ。聞いて欲しい」
ずるい、
こんなの、私が知っている健太さんじゃない
私が知っている健太さんは
面倒くさがりやで
時間にルーズで
私の話なんて、あんまり聞いてくれなくて、すぐエッチに持ち込む…
そんな真面目な…切ない顔なんて
今まで一度だってしたことない
健太さんに推される形で
私はうん、と頷いた
二人っきり、
それを避けたい
健太さんは個室がある居酒屋に行こうと言ったが、それを断り
24時間営業のカフェに来た
こんな時間だから
お客さんは少ない
健太さんはアイスコーヒー
私はココアを頼んだ
「相変わらず、好きなんだ」と
嬉しそうに笑った健太さんに
なんだか胸騒ぎがした