また、部屋に誰かがいた
「沙也加~!早くしないと学校、遅刻するわよ!」

それから数年が経ち、沙也加は高校生になっていた。

「いま行くってば!お母さん!お弁当は?」

「玄関に置いといたわよ。早くしなさい!」

慌ただしく、玄関に向かい、そこにあったランチボックスをカバンに押し込むと

「いってきま~す」

少し下る坂道を下りて、川沿いの道に出る。以前、祖母の家に行くときに、よく通った道だ。やがて左に折れて、さらに5分ほどで最寄り駅が見えてくる。

「なんとか、電車に間に合いそう…」
そう考えていた沙也加だったが、到着した駅の様子は、いつもと違っていた。出口に人が溢れていて、タクシー乗り場には長蛇の列ができていた。

「本日、7時に東駅付近で発生した人身事故の影響で現在、上下線とも電車の運行を見合わせております」

駅から流れるアナウンスが、その原因を教えてくれた。


< 101 / 147 >

この作品をシェア

pagetop