また、部屋に誰かがいた
結局1時間ほど遅刻して沙也加が学校に着くと、教室の中はまだ、半分ほどの生徒しか登校していなかった。
沙也加の親友だった小坂美亜も同じころに教室に入ってきた。

「おはよう。沙也加」

「あ、おはよう。美亜」

「また、人身事故だって。最近多くない?」

「そうだよね。一昨日も電車止まったし、先週から3回目だよね」

「なんだろう?飛び込み自殺とかかな」

「やだ!怖いこと言わないでよ」

そのとき、一人の男子生徒が教室に飛び込んでくるなりに叫んだ。

「おい、今朝の人身事故で死んだの、前島らしいぞ!」

前島泰治は沙也加たちと同じクラスだ。サッカー部に所属し、いつも明るく、自殺なんかするタイプではない。

「え?前島君が、なんで?」

「駅のホームから転落したらしいけど、なんで落ちたのかまではわからない」

朝の教室は騒然となった。
そのためか先生たちは職員室に籠ったまま出てこないようだ。
しかし、ざわめく教室内で一人、無言のまま青ざめた顔で美亜は立っていた。
目の前の親友の奇妙な様子に

「どうしたの?美亜」

沙也加はそう尋ねたが、彼女は固まったままで返事はなかった。


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