また、部屋に誰かがいた
やがて、全ての生徒が無事に登校でき、2時間ほど遅れて、その日の授業も行われ、昼休みには、学校の様子も落ち着いたが、沙也加のクラスでは、クラスメイトの突然の訃報に動揺が残っていた。


「美亜、いったい何があったの?今朝、すごく動揺してたみたいだったけど」

いまだ青ざめた表情をしている美亜に沙也加は尋ねた。

「沙也加、真剣に聞いてくれる?」
美亜はやっと重い口を開いた。


昨日、前島泰治を含めた男女5人でカラオケボックスに行った帰りのことだった。
学校が終わってから行ったため、店を出るころは、すっかり夜になっていた。
途中、踏切に差し掛かったとき、そのなかの一人が

「ここって、昨日、人身事故のあった場所らしいぞ」

「まじか?まだ体の一部とか落ちてんじゃねぇ?」ふざけて泰治がそう言うと、

「やめてよ。そんな怖いこと言うの」女子たちは、そんな彼をたしなめた。しかし、泰治は

「ほら、なんか落ちてるぞ」と踏切の端を指さした。

「だから、やめてって言ってるでしょう!」皆が泰治にそう言ったが、彼は真面目な顔で

「拾わなきゃ…」

そう呟いた泰治は、ふざけているようには見えなかった。
周りにいた者たちは、一瞬、背筋が冷たくなったが、
「おい!泰治!」大きな声で呼ぶと、はっとしたような表情をしてから彼は黙ってしまった。
やがて踏切から離れて5人は歩いていたが、その間も泰治はずっと無言のままだった。
そんな彼の様子を美亜はずっと気にしていたところへ、今朝の事故があったというのだ。
そんな不気味な話を聞いた沙也加は美亜に何も言ってあげられなかった。

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