また、部屋に誰かがいた
彼女の話では県庁の近くにあるその公園には池があって、その周りでは、たくさんの蛍が見られるらしい。
それで何回か一緒に見に行ったんだけど毎回ハズレ。一匹も居なかった。
そんな彼女と出会ったのも、その公園だった。
公園の管理事務所に仕事で行った帰り。事務所から公園内を横切って駐車場に向かっていた僕は不思議な女の子を見つけて思わず足を止めた。
季節は晩秋。公園内の木々が赤や黄色に色づいていて、たくさんの赤トンボが飛び交う空を吹く風が少し懐かしい匂いを運んでくる。
そんななかで彼女は空に向かって人差し指を立てて高く突き出したまま立っていた。
(なんだぁ???)
一瞬そう思ったけど、そんな彼女がまるで銅像のように美しいと感じた。空を見上げる目は遠目に見てもキラキラしていて、そんな奇妙な姿勢も美しく見える。
僕はしばらく、そのまま彼女を見ていた。やがて僕は彼女に歩み寄り、話しかけていた。
「あの~、何してるんですか?」
「あ!」
彼女は僕を見ると上げていた手を慌てて下ろして言った。
「なんでもないです!ほら!子供の頃やりませんでした?こうやって赤とんぼを指に留まらせるの」
「………」
彼女はなぜか僕にペコペコ頭を下げながら、恥ずかしそうに遠くに行ってしまった。
今にして思えば、僕はあの瞬間に彼女が大好きになっていた。
それで何回か一緒に見に行ったんだけど毎回ハズレ。一匹も居なかった。
そんな彼女と出会ったのも、その公園だった。
公園の管理事務所に仕事で行った帰り。事務所から公園内を横切って駐車場に向かっていた僕は不思議な女の子を見つけて思わず足を止めた。
季節は晩秋。公園内の木々が赤や黄色に色づいていて、たくさんの赤トンボが飛び交う空を吹く風が少し懐かしい匂いを運んでくる。
そんななかで彼女は空に向かって人差し指を立てて高く突き出したまま立っていた。
(なんだぁ???)
一瞬そう思ったけど、そんな彼女がまるで銅像のように美しいと感じた。空を見上げる目は遠目に見てもキラキラしていて、そんな奇妙な姿勢も美しく見える。
僕はしばらく、そのまま彼女を見ていた。やがて僕は彼女に歩み寄り、話しかけていた。
「あの~、何してるんですか?」
「あ!」
彼女は僕を見ると上げていた手を慌てて下ろして言った。
「なんでもないです!ほら!子供の頃やりませんでした?こうやって赤とんぼを指に留まらせるの」
「………」
彼女はなぜか僕にペコペコ頭を下げながら、恥ずかしそうに遠くに行ってしまった。
今にして思えば、僕はあの瞬間に彼女が大好きになっていた。