また、部屋に誰かがいた
玉木の父親は彼が18才のときに事故で亡くなった。
当時、今住んでいる家を買ったばかりだった母親にはそのローンが残ってしまったが、玉木がいた頃は彼がそれを払っていた。ところがホテル火災で亡くなってしまい、そのホテルへの賠償金訴訟もホテル自体が倒産してしまったこともあり解決されていないようだ。
経済的に母親が困窮しているんじゃないか。そのことを玉木はずっと気にかけていたのだ。

「ふーん。わかった!いいよ、様子を見てきてあげる。でも…なんでお母さんのこと『おかん』って呼ぶの?」

「なんでや!『おかん』は『おかん』やろ!それと…この前のテレビは…?」

「ああ!あれ?おかげで番組にならなかったわよ!せっかくゴールデンの番組に出演できたのに、怖い映像が全く撮れなかったから」

「俺の映像は…?」

「あんなもん…怖いとかいう以前に放送すらできないわよ!」

「…なんか…ごめん…」

廃ホテルを出たあかねは一度立ち止まり、暗く不気味な姿の建物を振り返った。
彼女に見える「霊」のほとんどは普通の人間と変わらない。むしろ彼らの多くは優しく、そして悲しい。
玉木が成仏できるよう手助けができたら…
あかねはそう考えていた。





< 15 / 147 >

この作品をシェア

pagetop