また、部屋に誰かがいた

黒崎カケル

「鹿島圭太さん。あなたは死神2部1課の配属です。」
「はい」

事故で圭太の魂は今、「現世」と「あの世」の中間にいた。
そこがどこなのか?自分がどうなってしまったのか?全くわからないまま圭太は

「天界へ行き再生の準備をする前に、君にはここで用役義務があります。」
「ようえきぎむ?」
「ここの仕事をしてもらい、その結果によって天界へ行く時期も、その後の再生コースも決まりますから、真面目にがんばってください。」
「はあ…」
「まずは、ここでやっていただく仕事に必要な知識とスキルを持ってもらうために研修がありますので、隣の窓口で履修申込手続きをしてください。」
「はい…」

(俺は死んでしもたんか?それにしても…ここはどこなんや?)

相手にうながされるまま窓口を4つ渡り、出された書類に言われるまま記入していき、研修教官と名乗る男の前まで行ったとき、圭太は疑問をぶつけた。

「俺は本当に死んでしもたんか?」
「何をいまさら…たいがい、この辺まで来るやつは理解しているぞ」
「再生の準備とか言われたんやけど、生き返ることができんのか?」
「それはできん。生まれ変わるってやつだ」
「生まれ変われんのか?」
「ああ。だが、それがいつなのか?何に生まれ変わるのかは神様がお決めになることだ」
「神さんが?」
「そうだ。ここでちゃんと真面目に役目を果たせば、それだけ早く、望みのものに生まれ変わることができる。」
「何に生まれ変わりたいかは聞いてくれるんか?」
「言わなくても、心に思うだけで、神様はご存じだ。それが叶うか否かは全て、ここでの働き次第というわけだ。」
「はあ…」

釈然としないまま研修は始まった。
「死神」の仕事とは、死期の迫った人間に事前に接触し、その「人となり」を調べて天界に報告することと、それとなく、その者に死期が近いことを悟らせ、悔いのない最期を迎えられるよう導いてやることだ。

「『ひととなり』って…どんなふうに」
「まぁ…それによって死後の処遇が決まるんだから重要な役目だ」
「そんなん…俺には荷が重すぎるで」


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