また、部屋に誰かがいた
不安しかない圭太に教官は厳しい表情で
「とりあえず関西弁は直せ!何回同じこと言わせるんだ!」
「しゃーないやろ!俺はずっとこうやったんやから」
「とにかく、直せ!でないと役目も果たせないし、生まれ変わることもなく、この先ずっと、この中界にいることになるぞ」

それは嫌だ。しかし納得がいかない圭太は教官に尋ねた。
「なんで関西弁があかんの?」
「イメージだ」
「はあ?」
「死神が関西弁っていうのはイメージ壊れるだろ」
「………」

憮然としている圭太に教官は続けた。
「そういえば、お前。生前も『死神』と呼ばれてたらしいな。」
「まあな。俺はめちゃめちゃ強かったし、この手の甲のL字のアザが死神が持ってる鎌に似てるからみたいやったけど…」
「いまどき、鎌なんぞ持たんぞ」
「え!そうなん?」
「あたりまえだ。昔は雰囲気出すために持つやつもいたが、どうせ使うことはなかったし、あんなのもん、かさばるだけだしな。」
「なんや…ちなみに先生がさっきから言うてるイメージて、今はどんな感じなん?」
「それは、今にわかる。とにかく関西弁を直せ!」
「………」




3か月の研修期間を終えて、圭太は「死神」になった。
かって、「北高の死神」と呼ばれていた彼は本物の死神になってしまったのだ。

「すいません。死神2部1課はどこですか?」

「この廊下まっすぐ行って、左側3つ目です。カウンターに案内板がありますから」

「ありがとう」

死神部は、それぞれ担当地域ごとに部が分かれている。
2部は主に東京の23区以外の市町村地域の担当だ。

定期配属日であったその日、廊下は圭太と同様の多くの新人死神が廊下をウロウロしていた。
壁や床、天井に至るまで白を基調にした廊下を進み扉を3つ数えて中に入ると20人くらいの男女が忙しく仕事をしていた。
カウンターの案内板には「死神2部1課」

「本日、こちらに配属されました鹿島圭太です。」

「ああ、鹿島さんね。奥のデスクが課長席ですよ。ちゃんと挨拶してきてね。」

カウンター脇の席にいた女性が後方の窓を背にして座る40歳前後のやや頭髪の薄い中年男性のほうを見ながら、優しく圭太に、そう言った。

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