また、部屋に誰かがいた
部屋の奥へ進み、圭太が
「今日からお世話になります。新人の鹿島圭太です。」

「おう!聞いてるよ。すっかり関西弁も直ってるな。」

「お陰様で…」

「俺はここの課長の笹山だ。これから、いよいよ下界勤務だが、その前にこっちに来い」
圭太は笹山課長に付いて奥の部屋に進んだ。

「ここに入れ」

その奥の部屋には銀色の怪しいBOX状の装置があった。
もはや、これ以上何が起きても驚かない自信があった圭太は課長に促されるまま、その装置のなかに入った。

「いいか。俺がいいと言うまで動くなよ!」

笹山は圭太にそう言うと、装置に着いた赤いレバーを下げた。

圭太の体に一瞬、衝撃が走ったが、それはすぐにおさまり、

「よし!いいぞ」

「………!」

装置から出た圭太は驚いた。目の前にあった鏡に映っていたのは、これまでの彼とは全くの別人だった。
しかも…かなりの優男でイケメン。

「うわ…!これ…俺?」

「あと、そこにある服に着替えろ!」

ダークのスーツに身を包み、まさに「黒」の雰囲気に変わった圭太は研修中に聞いた「死神のイメージ」というのが、なんとなくわかった気がした。

「お前の名前は今日から『黒崎カケル』だ。」

「黒崎カケル…?」

「そうだ。生前のお前のイメージは全て消してから下界に降りてもらう。それがここのルールだし、ここでの仕事を遂行するために必要なことだからだ。」

「仕事は、いつからですか?」

「2週間後に最初の仕事をしてもらうが、とりあえず明日から先輩死神の助手ということで下界に降りてもらう。」
笹山はそう言うとオフィスのほうに向かって叫んだ。

「おい!相馬!こっちに来てくれ!」

笹山の呼びかけに、ひとりの男が二人の前に歩いて来た。

「彼は相馬だ。明日、彼に助手として付いて一緒に下界行ってもらう。早くここの仕事を覚えてくれ」

圭太と同じくダークスーツに身を包んだ相馬は

「よろしく」
そう言って圭太に右手を差出し、圭太は
「よろしくお願いします」
と答え、その手を両手で握った。そのとき圭太は自分の右手の甲にL字のアザだけが残っていることに気づいた。

そのこと以外、彼はこの日から死神黒崎カケルという別人に生まれ変わった。

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