また、部屋に誰かがいた

あれから10年が経ち、玲奈は無事30歳になろうとしていた。
彼女は仕事を終え、部屋で彼女を待つ「誰か」の為に家路を急いでいた。

電車を降りて、改札を抜け、駅前の商店街で買い物を済ませた玲奈は、そこから10分くらい歩いて、アパートの一室にたどり着く

そこでは、
シングルマザーとなった彼女を今年10歳になる彼女の息子が迎えてくれた。

「ケイタ!ただいま」
「おかあさん!おかえり!」
「ごめんね。遅くなっちゃったね」
「お腹空いたよ」
「はいはい、今ごはんの支度するね。今日はハンバーグよ」

「やったあ!」

そう言ってキッチンにいる玲奈の隣に寄り添ってきた息子の手の甲のL字のアザを見ながら

「ケイタは本当にハンバーグが好きなんだね」

玲奈はにっこり微笑んだ。

「うん!こんな美味しいもん他にないよ!」

「そっか。ケイタ、おいで」

玲奈は息子を呼び寄せると優しく彼を抱きしめた。





「あなたは私の宝物だよ」


玲奈の腕の中には、幼い笑顔を見せるケイタがいた。







「部屋に誰かがいた」




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