また、部屋に誰かがいた
やがて車は目的地に到着した。

ほぼ真っ暗に近い木立のなかに不気味な白い建物がまさに「廃墟」といった姿で我々の目の前に現れた。

皆は車から降りると、
その「廃墟」のなかへと進んでいった。
入口のガラスは割れていて、ほぼ枠だけの状態で
落ち葉と土が積っている。
付近に明かりは全くなく、懐中電灯を頼りに進む僕たちが
月明りが届かない建物のなかに足を進めると、さらに暗く、
僕たちはゆっくり、そして慎重に足元を注意しながら、一列になって歩いていた。

ふと僕は、振り返ってその最後尾を歩いていた木下を見た。
彼は相変わらず血の気を失ったような表情のまま、
その歩き方はゆっくりとしながら、どこかぎこちないロボットのような歩きで
まるで既に悪霊にでも憑りつかれたようだった。

「木下、大丈夫か?」僕が彼に尋ねると
「ああ…だ…大丈夫だ…」

苦痛にゆがんだようにも見える顔をした木下は、かすれた低い声でそう答えた。

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