また、部屋に誰かがいた
「これは…猫か子犬?」
そう感じた彼の脳裏にあの日、庭で見た健人の背中が蘇る。
「まさか…あれは…」
急いで階段を駆け下り、庭に出て、その場所を探ってみると、何かを埋めたような痕跡があった。
恐ろしい予感と想像に、その土を素手で掘り返す達也の胸の動悸は高鳴る。
やがて、彼がそこに見たものは予想通りだった。
バラバラにされた猫の死骸。
それを見てしまい、息苦しいほどに気分が悪くなった達也は、そこを埋め直して、その場を離れた。健人の部屋で見つけた写真をその場に落としてしまったことにも気づかないままに。
ビジネスホテルに帰った達也は、その日、見てしまったものに対する恐怖とおぞましさに、体を震わせ、ベッドの隅に座っていた。
健人に見られる動物虐待の事実や心の闇は彼が知る異常犯罪者の特徴だ。
「やつ」はあの事件以前から、後に恐ろしいシリアルキラーとなる兆候を見せていたのだ。
気味の悪さから動揺してしまっている自分を抑えながら、彼は
「やはり、あいつはこの事件で消えてもらうしかない」
自らに、ここに来た目的の遂行を固く決心させるかのように独り言を言った。
それは、裏を返すと、結果的に殺人を見過ごすことへの罪悪感からである。
確かに吉本健人は憎い。
しかし母親や、ましてや幼い娘まで事件に巻き込まれ、その命を奪われるのだ。
今の達也なら、それを回避することができるのに、健人への復讐心から、その機会を逃そうとしている自分に対して、達也のなかに迷いが生じ始めていた。
そう感じた彼の脳裏にあの日、庭で見た健人の背中が蘇る。
「まさか…あれは…」
急いで階段を駆け下り、庭に出て、その場所を探ってみると、何かを埋めたような痕跡があった。
恐ろしい予感と想像に、その土を素手で掘り返す達也の胸の動悸は高鳴る。
やがて、彼がそこに見たものは予想通りだった。
バラバラにされた猫の死骸。
それを見てしまい、息苦しいほどに気分が悪くなった達也は、そこを埋め直して、その場を離れた。健人の部屋で見つけた写真をその場に落としてしまったことにも気づかないままに。
ビジネスホテルに帰った達也は、その日、見てしまったものに対する恐怖とおぞましさに、体を震わせ、ベッドの隅に座っていた。
健人に見られる動物虐待の事実や心の闇は彼が知る異常犯罪者の特徴だ。
「やつ」はあの事件以前から、後に恐ろしいシリアルキラーとなる兆候を見せていたのだ。
気味の悪さから動揺してしまっている自分を抑えながら、彼は
「やはり、あいつはこの事件で消えてもらうしかない」
自らに、ここに来た目的の遂行を固く決心させるかのように独り言を言った。
それは、裏を返すと、結果的に殺人を見過ごすことへの罪悪感からである。
確かに吉本健人は憎い。
しかし母親や、ましてや幼い娘まで事件に巻き込まれ、その命を奪われるのだ。
今の達也なら、それを回避することができるのに、健人への復讐心から、その機会を逃そうとしている自分に対して、達也のなかに迷いが生じ始めていた。