また、部屋に誰かがいた
2016年に調べた資料では、犯行が行われた時刻は深夜2時から3時の間。
しかし、その直前に真奈美は警察を呼んでいる。何があったのかはわからないが、その後の事件に関係があるのではと考え、達也はずっと吉本親子を監視していた。
吉本親子は公園から家に帰り、いまごろ家の中では真奈美が夕飯の支度でもしているのであろう。
明かりの点いた部屋からは、かすかにテレビの音が聞こえる。
(もうすぐだ…あと5~6時間後に、この家に何者かが侵入し、この親子を襲う)
達也は緊張した。
(その犯行直後に健人を家内の発見しづらい場所に隠せばいいんだ。警察だって、犯人がやったと思うだろう)
当時の記事では健人は発見されたとき、既に心肺停止状態であった。最初に現場に到着した警察官が蘇生のための応急処置を適切に行い、ほどなく救急車で運ばれた病院の懸命な処置によって「やつ」は一命をとりとめたのだ。
既にこの家に一度侵入したことのある彼は健人を彼が寝ていた部屋のクローゼットのなかに隠そうと考えていた。
わずか数分でかまわない。「やつ」の発見が遅れれば目的は達成できる。
侑里を殺した憎い相手ではあるが、やはり直接、自身の手で殺害することはできない。よって、それは達也にできる唯一の復讐であり、侑里を取り戻す手段であった。
そんなことを考えながら、家の外から様子をうかがっていた達也の耳に突然、大きな音が飛び込んできた。
ガシャン!!
何が起きたのか?彼は慌てて家の中を覗ける箇所を探した。
家の中からは娘の鳴き声が聞こえている。
リビングのカーテンのわずかな隙間を見つけた達也はそこから室内を覗き、思わず息を飲んだ。
手前で、真奈美が娘を抱きかかえて、何やら話しかけている。
そんな二人の背後から包丁を手に、悪魔のような目をした健人がゆっくりと近づいている。
その目には、明らかな殺意が感じられた。
「………!!」
何が起こっているのかわからず、達也は一瞬パニックになってしまった。
「何をするつもりだ?まさか…!」
健人は相変わらず母親の背後に冷たく鋭い視線を注ぎながら、近づこうといている。
そして、その手に握られた包丁の鋭い先は彼女に向けられている。
達也は思わず目の前のガラス窓を平手で叩いた。
バァン!
真奈美が音のする窓の方を向く。彼はさらに
バァン!バァン!バァン!
とガラス窓を叩いた。
それに反応して、真奈美の背後にいた健人が慌てて包丁を元の場所に戻すのが見えた。
「良かった…」そんな達也に向かって部屋のなかから真奈美の声が聞こえた。
「なんなの!誰なの!いい加減にして!警察呼ぶわよ!」
しばらくして、この家に2名の警察官が訪れたのを、離れた場所から眺めながら、達也の頭の中は混乱していた。
「いったい…どうなっているんだ?もしかして、もう2001年は変わってしまっているんだろうか?」
彼の目前で起きた想定外な状況に戸惑いながら、この夜に立ち会うことで2016年を変えようとしていた計画に不安を感じ始めていた。
しばらくして警察官が帰り、再び周辺は静かになった。もうすぐ事件発生の時刻となる。
いったい、誰がここを訪れて、この親子に刃を向けるのか?
そして、そいつが立ち去った後に瀕死の健人が助からないようにするため、自分がこの家の中に入らなくてはいけない。
犯行直後の殺人現場に入るのだと考えると恐怖が迫ってくる。
だが、既に2001年は変わっていて、今夜は何も起きないのかもしれない。
様々な不安のなかで達也は家のすぐ外で、そのときを待った。
しかし、その直前に真奈美は警察を呼んでいる。何があったのかはわからないが、その後の事件に関係があるのではと考え、達也はずっと吉本親子を監視していた。
吉本親子は公園から家に帰り、いまごろ家の中では真奈美が夕飯の支度でもしているのであろう。
明かりの点いた部屋からは、かすかにテレビの音が聞こえる。
(もうすぐだ…あと5~6時間後に、この家に何者かが侵入し、この親子を襲う)
達也は緊張した。
(その犯行直後に健人を家内の発見しづらい場所に隠せばいいんだ。警察だって、犯人がやったと思うだろう)
当時の記事では健人は発見されたとき、既に心肺停止状態であった。最初に現場に到着した警察官が蘇生のための応急処置を適切に行い、ほどなく救急車で運ばれた病院の懸命な処置によって「やつ」は一命をとりとめたのだ。
既にこの家に一度侵入したことのある彼は健人を彼が寝ていた部屋のクローゼットのなかに隠そうと考えていた。
わずか数分でかまわない。「やつ」の発見が遅れれば目的は達成できる。
侑里を殺した憎い相手ではあるが、やはり直接、自身の手で殺害することはできない。よって、それは達也にできる唯一の復讐であり、侑里を取り戻す手段であった。
そんなことを考えながら、家の外から様子をうかがっていた達也の耳に突然、大きな音が飛び込んできた。
ガシャン!!
何が起きたのか?彼は慌てて家の中を覗ける箇所を探した。
家の中からは娘の鳴き声が聞こえている。
リビングのカーテンのわずかな隙間を見つけた達也はそこから室内を覗き、思わず息を飲んだ。
手前で、真奈美が娘を抱きかかえて、何やら話しかけている。
そんな二人の背後から包丁を手に、悪魔のような目をした健人がゆっくりと近づいている。
その目には、明らかな殺意が感じられた。
「………!!」
何が起こっているのかわからず、達也は一瞬パニックになってしまった。
「何をするつもりだ?まさか…!」
健人は相変わらず母親の背後に冷たく鋭い視線を注ぎながら、近づこうといている。
そして、その手に握られた包丁の鋭い先は彼女に向けられている。
達也は思わず目の前のガラス窓を平手で叩いた。
バァン!
真奈美が音のする窓の方を向く。彼はさらに
バァン!バァン!バァン!
とガラス窓を叩いた。
それに反応して、真奈美の背後にいた健人が慌てて包丁を元の場所に戻すのが見えた。
「良かった…」そんな達也に向かって部屋のなかから真奈美の声が聞こえた。
「なんなの!誰なの!いい加減にして!警察呼ぶわよ!」
しばらくして、この家に2名の警察官が訪れたのを、離れた場所から眺めながら、達也の頭の中は混乱していた。
「いったい…どうなっているんだ?もしかして、もう2001年は変わってしまっているんだろうか?」
彼の目前で起きた想定外な状況に戸惑いながら、この夜に立ち会うことで2016年を変えようとしていた計画に不安を感じ始めていた。
しばらくして警察官が帰り、再び周辺は静かになった。もうすぐ事件発生の時刻となる。
いったい、誰がここを訪れて、この親子に刃を向けるのか?
そして、そいつが立ち去った後に瀕死の健人が助からないようにするため、自分がこの家の中に入らなくてはいけない。
犯行直後の殺人現場に入るのだと考えると恐怖が迫ってくる。
だが、既に2001年は変わっていて、今夜は何も起きないのかもしれない。
様々な不安のなかで達也は家のすぐ外で、そのときを待った。