また、部屋に誰かがいた
いよいよ時刻が2時を回ったころである。

「きゃああああ!」

突然、2階から悲鳴が聞こえた。
やはり事件は起きてしまった。
しかし、外で見張っていた達也は侵入者など見ていない。

しばらく外で中の様子を伺っていたが、そこから逃走する者も出てこない。

(どうなっているんだ?)

しかし、先ほどの悲鳴を聞いた近所の者の通報によって、もうじき警察が来てしまう。
達也に迷っている時間はなかった。

リビングのガラスを割って、家の中に入った達也は暗い室内を慎重に進んだ。
もしかしたら殺人犯と鉢合わせるかもしれない。
そんな恐怖と戦いながら2階に足を進めた彼はそこで、信じられない光景を見た。

それは真奈美と彩奈の遺体を見下ろしながら、血の付いた包丁を持つ健人の姿だった。

「お前、誰?」達也を見た健人はそう言うと同時に、その刃を達也に向けて襲ってきた。
二人はもみ合ううちに、お互いの体に数か所の傷を負ったが、やがて健人の手から包丁が離れ、あおむけに倒れた健人に馬乗りになり、達也はその首に手をかけた。

「なんなんだ?お前はいったい?」そう尋ねる達也に健人は

「こいつらがお父さんを僕から離した。だから…死ねばいいんだ」

こいつは狂っている。こんな子供のころから殺人者だったんだ。

「殺人者の資質」それを今、摘み取ってやる!

健人の首にかけた手に力をこめた達也の耳に、遠くから迫る警察車両のサイレンの音が聞こえた。達也は、さらに力をこめる。
だが、そのとき達也の心臓が高鳴り、こめかみが脈打つ。

ドクン…ドクン…ドクン…ドクン…


「…………!!!!!!」

そこで、彼の意識は途切れた。

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