また、部屋に誰かがいた
僕は必死で走っていた。雨の中を傘も持たずに、駅近い通りの昼間の雑踏をかき分けて。
すれ違う通行人が僕を見て、はっとしたような驚いた顔になり、
なかには悲鳴をあげる者もいた。
その日の蒸し暑さにべたついていたTシャツも雨に濡れて体に張り付き、さらなる不快感を僕に与えていた。
やがて僕は人通りの多い道を避け、脇道に入る。
さらにビルの隙間に身を隠すように、「その場」から逃げていた。
「はやく逃げなきゃ…」
息が切れ、正直、足もフラフラだったが、僕は走ることを止めなかった。
「このまま逃げられるかも…」
頭の中にそんな考えがよぎった瞬間、急に目の前に人が立ちはだかった。
そしてバチっという激しい衝撃で僕は気を失った。
どのくらい気を失っていたのだろうか?
時間の感覚が全くない。
気が付くと僕は目隠しをされ、椅子に座った状態で固定されていた。
テレビの音が聞こえる。
「今日、昼頃に新宿区の路上で20代の女性アイドルタレントが鋭利な刃物で刺され亡くなった事件ですが、その後も犯人の足取りはつかめておりません。亡くなった西尾百合奈さんは現在、ドラマやバラエティ番組などで活躍中のアイドルタレントで…」
そうか…彼女は亡くなったんだ…
その死亡を聞いて、改めて僕は心に開いてしまっていた大きな穴を冷たい風が通り抜けるような虚しさを感じた。
彼女を刺したのは僕だ。
救急車やパトカーのサイレンの音と悲鳴を聞きながら、現場から逃げていた。そして…
いま、僕はどうなっているんだ?
ここはどこだ?おそらく警察ではない。
目隠しによって視力を奪われている僕は周囲の物音と気配を探った。かすかに聞こえる雨音に、わずかではあるが空気の動きを。
やがて僕は感じ取った。
(この部屋に…誰かいる…)
すれ違う通行人が僕を見て、はっとしたような驚いた顔になり、
なかには悲鳴をあげる者もいた。
その日の蒸し暑さにべたついていたTシャツも雨に濡れて体に張り付き、さらなる不快感を僕に与えていた。
やがて僕は人通りの多い道を避け、脇道に入る。
さらにビルの隙間に身を隠すように、「その場」から逃げていた。
「はやく逃げなきゃ…」
息が切れ、正直、足もフラフラだったが、僕は走ることを止めなかった。
「このまま逃げられるかも…」
頭の中にそんな考えがよぎった瞬間、急に目の前に人が立ちはだかった。
そしてバチっという激しい衝撃で僕は気を失った。
どのくらい気を失っていたのだろうか?
時間の感覚が全くない。
気が付くと僕は目隠しをされ、椅子に座った状態で固定されていた。
テレビの音が聞こえる。
「今日、昼頃に新宿区の路上で20代の女性アイドルタレントが鋭利な刃物で刺され亡くなった事件ですが、その後も犯人の足取りはつかめておりません。亡くなった西尾百合奈さんは現在、ドラマやバラエティ番組などで活躍中のアイドルタレントで…」
そうか…彼女は亡くなったんだ…
その死亡を聞いて、改めて僕は心に開いてしまっていた大きな穴を冷たい風が通り抜けるような虚しさを感じた。
彼女を刺したのは僕だ。
救急車やパトカーのサイレンの音と悲鳴を聞きながら、現場から逃げていた。そして…
いま、僕はどうなっているんだ?
ここはどこだ?おそらく警察ではない。
目隠しによって視力を奪われている僕は周囲の物音と気配を探った。かすかに聞こえる雨音に、わずかではあるが空気の動きを。
やがて僕は感じ取った。
(この部屋に…誰かいる…)