また、部屋に誰かがいた
「まず、今回の動機を教えてください。殺してしまいたいとまで考えた理由をです」
部屋のなかの男が言った。
こいつの他に何人くらいいるんだろうか?まだひとりの声しか聞いていない。
僕は気を静め、息を整えてから、その質問に答えた。
「裏切りによる絶望を僕に与えたから」
「裏切りが許せなかったと?」
「僕は親からも捨てられた。孤独で気が狂いそうだった僕を彼女までが…」
「親からも捨てられた?」
「僕の父は公務員だった。母は専業主婦。そんな両親から僕は全く愛を受けていなかった」
「親から愛情を貰えなかったって…?何か暴力を受けたりしたんですか?」
「そんなことはなかった」
「食事を与えてくれなかったとか?」
「そんなことじゃないんだ!『愛』を与えてくれなかったんだ」
「全く、意味がわかりませんねぇ…」
「普通に生きてきた人にはわかりませんよ…」
そう…僕は普通に生きたかった。でも、できなかった。
高校生のときに読んだ小説の主人公に僕はひどく共感し、そして悟った。
普通に生きているたくさんの無神経な人間と違って、僕は純粋すぎたのだ。
僕は自分の心の隙間をずっと抱えて生きてきた。でも世の中のほとんどは、その隙間に気付くことすらないだろう。
部屋のなかの男が言った。
こいつの他に何人くらいいるんだろうか?まだひとりの声しか聞いていない。
僕は気を静め、息を整えてから、その質問に答えた。
「裏切りによる絶望を僕に与えたから」
「裏切りが許せなかったと?」
「僕は親からも捨てられた。孤独で気が狂いそうだった僕を彼女までが…」
「親からも捨てられた?」
「僕の父は公務員だった。母は専業主婦。そんな両親から僕は全く愛を受けていなかった」
「親から愛情を貰えなかったって…?何か暴力を受けたりしたんですか?」
「そんなことはなかった」
「食事を与えてくれなかったとか?」
「そんなことじゃないんだ!『愛』を与えてくれなかったんだ」
「全く、意味がわかりませんねぇ…」
「普通に生きてきた人にはわかりませんよ…」
そう…僕は普通に生きたかった。でも、できなかった。
高校生のときに読んだ小説の主人公に僕はひどく共感し、そして悟った。
普通に生きているたくさんの無神経な人間と違って、僕は純粋すぎたのだ。
僕は自分の心の隙間をずっと抱えて生きてきた。でも世の中のほとんどは、その隙間に気付くことすらないだろう。