また、部屋に誰かがいた
「くだらない…」

「え…?」

意外な言葉に驚く僕に、男が続ける。

「くだらないっていうか…お前!ばかじゃねぇの!」

(何を言っているんだ?こいつは?)

「お前がおかしなことするんじゃないかと思って、仲間を集めて見張っていたのに…まさかいきなりあんなことするとまでは思ってなかった」

急に態度を変え、険しい口調で話す男の声に僕は困惑してしまった。

「ここに連れ込んで、すぐに制裁を加えようと思ったが、気を失っているやつを痛めつけても面白くないし、もしかして本当に彼女と個人的な知り合いだったんだとしたら、その辺を聞いておきたいと思っていたんだけど、これ以上、お前のばかばかしい話は聞いていられないしな…」

そんな言葉を呆然と聞いている僕の口を誰かがガムテープのようなものでふさいだ。

「本当は、お前の悲鳴や命乞いなんかも聞きたいんだけど、部屋の外に聞かれたら困るから、しょうがない」

(ぼ…僕をどうするつもりだ!やめろ!やめろ!やめろ!)

視界を遮られ、声も出せず、身動きできない僕に「やつら」が近づいて来ているのが気配でわかる。

(いやだ!いやだ!助けて!助けて!)

いきなり、太ももに激痛が走った。何かで刺されたようだ。
次は片方の太ももが、腕が、体中が激痛に襲われる。

僕は心の中で叫んだ。



(死にたくない!)










「部屋に誰かがいた」












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