キミと恋に落ちる可能性
すると案の定、その女の人はあたしに話しかけてきた。
「サトウ ハナさんですか?」
また"ハナ"って間違えられた。
あたしの名前ってそんなに覚えにくいのかな。
"ハナノ"って"ノ"がつくだけじゃん。
その一文字すら覚えてくれないんだ。
「…そうですけど、」
そうやって肯定してしまうあたしもあたしなんだろうけど。
あたしが返事をすると、女の人は良かった、と言わんばかりに微笑んだ。
「陽空会長がお呼びでしたよ?」
「ヒナっ…櫻井先輩が、ですか…?」
ヒナタのことを『陽空』と呼んでいることや、ヒナタがあたしを呼んでいるということを知っていることに若干の違和感を覚えた。
だってヒナタがあたしを呼ぶ時はいつも自分で来ていたから。人に頼むなんて初めてだった。