キミと恋に落ちる可能性



でもヒナタは人にあれだけ囲まれていたわけだし、人に頼むのも無理ないか、と結論づけた。


「はい。あそこらへんに行くように伝えておいて、と言われたんです」

「…え」

“あそこ”と指で示された場所は岩がゴツゴツしていて崖のようになっている場所。

よく刑事ドラマで見るような崖、とまでは言わないけれど十分な高さはあって、人気は全く無さそう。


あんなところで話すほど、聞かれてはならない話なのだろうか?


「…本当にあそこなんですか?」

「はい。会長はそう言ってましたよ?」

首を少し傾げにこりと笑う女の人は、化粧が少し濃くキツイ印象で、これ以上深く質問するのは気が引けた。


さっきまでヒナタが囲まれていた場所をチラッと横目で見てみるとそこには人ひとりおらず、ちょっと前まであった人だかりが嘘のよう。



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