初恋のお兄さんと私


「いいよねえ、沖縄に親戚がいる人は」


ちょっと皮肉を言ってやる。
瑞希とは去年一緒のクラスで、同じ剣道部で仲がいい。


女子にしては背が高めで、肩までの髪を後ろで縛り、目鼻立ちもはっきりとした美人だ。
次期主将候補の腕前だった。


「全員、揃ってるか」


聞き覚えのある声だ。
振り向いた私は固まる。


髭をきれいに剃り、髪は掻き上げ、濃紺のスーツにグレーのシャツ。紺のネクタイ。


一瞬私と目が合うと、


「今日から担任になる、阿久津顕奘だ。始業式が始まるから体育館に行け。初めに言っとくが、嘗めてかかると痛い目見るぞ、覚悟しとけよ」


低めの声で脅すように。
『阿久津先生』はクラス中を威圧した。


ぞろぞろと、体育館に移動する生徒たち。その隙間で私に近付くと、


「とくに榛葉、お前はな」


ニヤリと笑う。


ヒイイ!?



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