初恋のお兄さんと私
朝のHRが終わると、一時間目が始まるまでの僅かな時間にも、お近づきになりたい女子に取り囲まれた。
七海くんは早くも人気者になっていた。やれ趣味は何だ、どこに住んでると。
トイレに立とうとした私に、飛び付くように七海くんは着いてきた。この子が犬みたいだ。
「いや、あの、みんなといなきゃ」
刺さる視線に耐えきれずに、解こうとする。が、お構いなしだ。
「名前、まだ聞いてなかったね」
「……私??…愛芽、榛葉愛芽」
「愛芽ちゃんかあ!!いい名前だね!?彼氏いるの???」
いきなり馴れ馴れしい子だ。昨日と随分印象が違う。テンションが上がっているのだろうか。
「……いたら、どうなの」
「奪っちゃおうかな!?僕、一目惚れしちゃったんだ、愛芽ちゃんに」
こうまではっきり言われると、妙にくすぐったい。こんな可愛い男子に告白されたら、女子はイチコロだろう。
顕奘さんが聞いたらどうするかな。ふと、七海先生の顔が浮かんだ。
「そういえば、新任の先生にも七海っていたけど」
「ああ、うちの親戚だよ。美夏(ミカ)さんも、この学校の先生に一目惚れしたらしいんだ」
顕奘さんのことだ。
やっぱりそうなんだ。
どんなにあがいても敵わない、大人同士だし、気だって合うだろう。一緒にお酒とか飲むんだろうな。
私みたいなお子様より、お似合いかもしれない。