初恋のお兄さんと私


朝のHRが終わると、一時間目が始まるまでの僅かな時間にも、お近づきになりたい女子に取り囲まれた。


七海くんは早くも人気者になっていた。やれ趣味は何だ、どこに住んでると。


トイレに立とうとした私に、飛び付くように七海くんは着いてきた。この子が犬みたいだ。


「いや、あの、みんなといなきゃ」


刺さる視線に耐えきれずに、解こうとする。が、お構いなしだ。


「名前、まだ聞いてなかったね」


「……私??…愛芽、榛葉愛芽」


「愛芽ちゃんかあ!!いい名前だね!?彼氏いるの???」


いきなり馴れ馴れしい子だ。昨日と随分印象が違う。テンションが上がっているのだろうか。


「……いたら、どうなの」


「奪っちゃおうかな!?僕、一目惚れしちゃったんだ、愛芽ちゃんに」


こうまではっきり言われると、妙にくすぐったい。こんな可愛い男子に告白されたら、女子はイチコロだろう。


顕奘さんが聞いたらどうするかな。ふと、七海先生の顔が浮かんだ。


「そういえば、新任の先生にも七海っていたけど」


「ああ、うちの親戚だよ。美夏(ミカ)さんも、この学校の先生に一目惚れしたらしいんだ」


顕奘さんのことだ。
やっぱりそうなんだ。


どんなにあがいても敵わない、大人同士だし、気だって合うだろう。一緒にお酒とか飲むんだろうな。


私みたいなお子様より、お似合いかもしれない。


< 42 / 80 >

この作品をシェア

pagetop