初恋のお兄さんと私
あっという間に手懐ける。
接客の躾もされているのですぐに寄ってくるが、新客が来るたびに歓迎しにいく。
先客も数組いた。
ほとんどカップルだ。
子犬と戯れる私可愛いでしょ、アピールと、それを眺めつつ、俺にも懐くんだよ、邪なことはしない、いい人だからね、アピール。
悪く言えば、それぞれに目論見があるかも知れない。純粋に犬好きで行く人間が何人いるのだろう。
そう言いながら私も犬好きだ。
それなりに寄ってくる。
けれど、七海先生のはしゃぎ振りに、なんとなくテンションが下がっていた。
「愛芽ちゃん、愛芽ちゃん、ほらほら」
胡座をかいて、膝に乗って来たミニチュアダックスを撫でて、楽しそうにはしゃぐ七海くん。
血筋だ。
ふと、向こうの壁にもたれてなんとなく不機嫌な顕奘さんが、立ち上がってこっちに来る。
「出るぞ」
「な、何言ってるんですか!?今日は僕とデートしてるんですよ!?」
見上げて怒る七海くん。
舌打ちすると、
「いいから、来い」
私の腕を掴もうと近付いた。