初恋のお兄さんと私
――あれから10年。長かった年月を経てようやく再会の時。
今となっては陳腐な言葉なんかでは例えようもないほど、憧れの人はさぞ磨きが掛かり、神々しいほどのイケメン様になっていることだろう。
私だって、これでも自分なりに頑張って、釣り合う女の子にならなくてはと、裁縫、料理、勉強と、身だしなみや言葉使いだって気をつけた。
髪だって頑張って背中まで伸ばして、トリートメントしてお手入れしてるんだから!!
誰も認めても誉めてもくれないけど。
ようし、帰ったらうんとおめかしして、驚かせてやろう!!
「なに一人でガッツポーズとってんだ、バーカ」
男の声に、我に返る。
いつの間にか家の前に来ていた。
「早く開けろよ。留守みてえだ」
私は何が何だかわからずに固まった。
ど、どちら様!?
郊外のマンションの一室。
両親と私の三人で暮らす部屋の前に、見たこともないオジサンが立っていた。
髪はボサボサ、無精髭。サングラスをかけ、濃紺の無地のシャツに黒のパンツ。高そうな腕時計、靴。
背が高く、がっしりとした体型、いかにもどっかの組の幹部クラスで、夜の世界が似合う方。