初恋のお兄さんと私

夕方、
調理実習で作った冷麺を少し分けてラップしたものをお見舞いに持って、阿久津家に向かう。


「一人じゃ心配だよ。何されるかわからない」


と、七海くんも付いてくる。


あなたじゃあるまいし、と思いつつ、呼び鈴を鳴らしてみた。


返事がない。
ノブを回すと鍵は開いていた。


「…お邪魔しまーす」


寝ているのかもしれない。音を立てないように、そーっと中に入ってみた。


たまに行き来するので、勝手知ったるものだった。


「………っ!?」


息を飲んだ。
顕奘さんのベッドの脇に七海先生が前屈みで何かしている。


寝ているのをいいことに、あるいは起きていて、キスしているようにしか見えなかった。


思わず持っていた鞄を落とす。
気配に、ふと、振り向くと、


「何しに来たの??ここはあなたのお家じゃないはずよ??」


顕奘さんは、朦朧としていたようだ。
その言葉に目が覚めたらしく、ガバッと飛び起きた。


けれど、七海くんの姿もあることに気づくと、


「…何しに来たんだよ。わざわざ見せつけに来たのか??」


「見せつけてるのはそっちでしょう!?」


頭をわしわしと掻くと、咳き込む。


「……熱があるんだ…帰ってくれ、みんな」


かなり辛そうに苛立つ。
堪えきれずに涙が溢れ、部屋を飛び出した。


「愛芽ちゃん!!」



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