初恋のお兄さんと私


パン!!パパン!!


凄い勢いで打ち込んで来る。
けれどがむしゃらではない。息は整い、きちんと構えてくる。


「ヤアッ!!」


思わずたじろぐ。
本気だ。
だからって、負けるわけにはいかない。


ハーーッと息を吐き、冷静さを取り戻す私。


面が来た。


パン!!


弾き返すことができた。けれど1ミリも気は抜けない。


竹刀が交差し、お互いに激しく打ち返す。


滅多とないことだ。不意に汗が目に入り、油断してしまった。


「胴ッ!!」


パン!!


胴が入った。


「……っ!!」


しまった。
先手を取られた。
神様に見離された気がした。


「榛葉…!!」


集中しているので、顕奘さんの声も耳に入らない。



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