初恋のお兄さんと私
「…彼氏とかできたのか」
「うん、そうね…クラスの男子」
嘘だった。けれどこれくらいの嘘を付かないと気が済まなかった。
「ああ、そうだ、洗面も借りるぞ」
「えっ?!ああ、…はい」
何だかいちいちビクビクする。
と、お風呂のシャワーの音がした。
「いや、せ、洗面って!!」
慌てるけれど、もうお風呂の中で、声も掛けられないし、届かない。
「あ~、さっぱりした!!」
10分くらいで出た顕奘さんは、その辺の棚から勝手に出したバスタオル片手に、髪を拭きながらリビングに戻る。
ソファから座って振り向き、ドキッとする。
上半身、裸だった。
「実は昨日から風呂に入れてなくてな」
「なな!?何か着てよっ!!」
赤くなって慌てて目をそらすと、
「気にするな、減るもんじゃなし」
「い、一応、女の子の前ですっ!!」
「そうだっけな」
タオルを首に掛けたまま、ニヤニヤする。
「…な、なに…」
ソファの隅に追いやられ、目のやり場に困って泣きそうになる。お風呂上がりの温かい肌が触れそうになる。
引き締まった腕や胸板、腹筋があらわになっている。半乾きの髪から滴が落ちた。