一寸の喪女にも五分の愛嬌を
夜の街に雨が降り続く。
しばらく飲み交わしてから、二人で一緒にベッドの中に潜り込んだ。
――どうか、もうこれ以上トラブルは起きませんようにと願いながら、成瀬が背中から抱きしめてくれるのを、甘んじて受け入れながら眠った。
温かく包まれていると、このまま成瀬に甘えてしまいたくなる。
成瀬が本気と言うのは本当のことなのだろうか。
そんなことないよね……
傷つきたくない、これ以上。
だから本気になんてしない。
でも本心はどうなの……
グルグルと考えながら、私は雨音を聞きながら意識を手放す。
「……先輩、寝た?」
耳元で成瀬がささやき、そっと唇を寄せられたような気がしたけれど、それは夢の中のことだったかもしれない。
全部うやむやにして、今だけは成瀬の腕の中で眠ってしまおう。
思い出したくないあの人のことも、このまま雨に流れてしまえばいいと思いながら、私は温もりの中で眠った。