一寸の喪女にも五分の愛嬌を
「す、すみません……」
よろっと立ち上がる成瀬は背も高い分かなり背中を丸めている。だから彼の柔らかな髪が私の首筋をくすぐる。
(柔らかい髪……それになんでこんないい匂いしてんの?)
居酒屋の雑多な匂いに混じらず、ほんのりといい香りがしている。
(やな感じ)
とにかく関わり合いにならない方がいいことだけははっきりとしているのだ。
「トイレ貸したら、タクシー呼ぶからちゃんと帰ってね」
聞いているのかいないのか、エレベーターに乗り込んでも成瀬は黙ったままだった。
とりあえず成瀬をトイレに押し込んだのが、十時四三分。
十一時まででイベントが終了してしまうので、私はスーツを脱ぎもせず、すぐにベッドに腰掛けアプリを起動する。
「ああ、もう! こんな時に限って起動が遅いんだから!」
ブチブチ文句を言いながら、なんとか間に合いそうだと一安心する。
「巻きで行ってよね、ほら、早く早く」
スマホに向かって大人げなく言いながら、タップしてイベントを進めていく。
「よし、間に合う、これは間に合うわ。あとこれを購入してっと……」
表示されているティアラを購入すれば、イベントコンプは目前だ。
「よし、購入――」
ボタンを押そうとした瞬間、部屋に顔を出した成瀬が呼んだ。
「先輩……ちょっといいですかぁ~」
「よくない! 呼ぶな!」
思わず本気で怒鳴ってしまった。
よろっと立ち上がる成瀬は背も高い分かなり背中を丸めている。だから彼の柔らかな髪が私の首筋をくすぐる。
(柔らかい髪……それになんでこんないい匂いしてんの?)
居酒屋の雑多な匂いに混じらず、ほんのりといい香りがしている。
(やな感じ)
とにかく関わり合いにならない方がいいことだけははっきりとしているのだ。
「トイレ貸したら、タクシー呼ぶからちゃんと帰ってね」
聞いているのかいないのか、エレベーターに乗り込んでも成瀬は黙ったままだった。
とりあえず成瀬をトイレに押し込んだのが、十時四三分。
十一時まででイベントが終了してしまうので、私はスーツを脱ぎもせず、すぐにベッドに腰掛けアプリを起動する。
「ああ、もう! こんな時に限って起動が遅いんだから!」
ブチブチ文句を言いながら、なんとか間に合いそうだと一安心する。
「巻きで行ってよね、ほら、早く早く」
スマホに向かって大人げなく言いながら、タップしてイベントを進めていく。
「よし、間に合う、これは間に合うわ。あとこれを購入してっと……」
表示されているティアラを購入すれば、イベントコンプは目前だ。
「よし、購入――」
ボタンを押そうとした瞬間、部屋に顔を出した成瀬が呼んだ。
「先輩……ちょっといいですかぁ~」
「よくない! 呼ぶな!」
思わず本気で怒鳴ってしまった。